(いつかどこかのはじまりの。)
pete
ピート
2022/1/13 19:31 [5]
――…へぇ。僕ってこんな顔してるんだ?(突然、世界が滅びた日から幾日過ぎたのだろう。世界が滅びたのと同じように、その日、唐突に"自分"は生まれた。地上の長として君臨していた人類をそっくりそのまま小さくした体。若草色のチュニックにズボン、背中にはふわりと広がる透明な羽根。所謂、御伽噺に出てくる妖精といった姿が、見下ろした水たまりに映っていた。鏡を初めて見た動物のように、しきりに様々なポーズをとったり、百面相をしてみる内に、どうやら自分の姿はこういうものとして創られたのだと理解した――誰に創られたのかと言えば、それは、先ほどから瓦礫の上に腰掛けて熱心に小さな携帯ゲーム機に向き合っている少年である。)おーい、おーい!おいこらー!そんなもんやってないで構えよー!なあ、なあってばー!(ひらひらと羽根をはばたかせて少年の側でくるくる回りながら喚き散らしてみるも、此方の声は聞こえていないのか、うんともすんとも言わない。それどころか、ゲームをしまってごろりと横になる始末。悔し紛れに頭の上を蹴ってもいたみを感じた様子もなく)…呼び出しておいて無視とか酷くない?ねぇ、普通は、涙にむせんですたでぃんぐ・いんぐりっしゅで迎えるもんでしょ!タクヤ、キミは本当にわかってない!わかってないよ!(翌朝も、またその翌朝も果敢にアタックするが一向に認識される事は無かった。不貞腐れながらも、彼の側から離れるのも嫌で、結局はぶつくさ言いながら肩に乗ったり、或いは頭頂部に陣取っては彼のやることなす事を批評したりしながら行動を共にしていた。今日も今日とて頭の上に陣取って毎度の如く勤しんでいるゲーム画面を眺めていた)…こんなのなにがおもしろいのさ?(上から落ちてくるブロックをうまい具合に組み合わせて消していく単純なゲームであるが、妖精にしてみればさっぱりわからない。恐らくプレイしたところですぐにゲームオーバーである。何せ小さな頭頂部には夢しか詰まっていないので)なー、タクヤー、ほらほらー見てよー!こっちのが面白いよー!(猫ですらここ迄鬱陶しくはないだろうという程に、髪の毛や耳や服を引っ張っては注意を促して、それでも飽き足らずにポトリと携帯ゲーム機の上に降り立つとそのままステージの上でゲームのBGMに合わせてダンスを踊って見せている。一人フォークダンスという奇妙奇天烈な行動を実に楽しそうに実行していた――が、当然、彼には見えない)ヘイッ!って…――見えないのかよー、つまんないの。…つまんなそうな顔(軽快に踊り終えてポーズを決めたが、拍手も喝采もなければ流石にテンション維持は出来ない。唇を尖らせてゲーム画面を見下ろしている顔を見上げた。どうせ見えないだろうと失礼な感想を口にした時、此方を見つめる瞳が大きく見開かれた。その瞳の中に、自分が、いた)やぁ!タクヤ。はじめましてじゃないけど、僕はピート。ネバー・ランドの案内人さ!さぁ、細かい事はいいから、僕をぞんぶんに構うといいよ!(驚きついでに携帯ゲーム機を落とさなかったのはさすがといった所。ゲームオーバーの文字を踏みつけながら胸をそらして尊大に言い放った自分を少年は何と思っただろう)――…ああ、ついに狂ったとか思うなら、ぜひ、全裸で「ジユウダー」って走り回るのをおススメするよ!誰も見てないしね!…恥ずかしい?恥ずかしいって気持ちがあるなら、まだキミは大丈夫さ!(僕が保証する、なんて恐ろしく信憑性の低い事をマシンガントークの勢いで言い放つと、びっとその鼻先に人差し指を突き付けて)まぁ、手始めに、遊びの天才ピート様がもっと面白い事を教えようじゃないか!タクヤ!コーエイに思うといいよ!(矢継ぎ早のハイスピードでグイグイ引っ張りながらの提案は、地面にマスを描いての〇×ゲームだった。)――て、手加減してやっただけだし!ほんとは、僕、オ…オレオ?オレオの方が得意なんだからね!あー、惜しいなぁ、ザンネンだなぁ〜。オレオがあったらなぁ〜(戸惑いながらも彼が付き合ってくれたならば、寧ろ負ける方が難しいゲームで思いっきり負けた妖精が、苦し紛れの言い訳を口にする姿と、やがて二人っきりのひとり旅を続ける内、壊れた玩具屋の残骸の中からオセロ盤を発掘し、同じような言い訳をする妖精の姿があっただとか――…少年が大人になる旅の、はじまりの物語の一幕)
2022/1/13 19:31 [5]
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