Unknown
2022/1/15 22:54 [8]
(近付いてくる足音に振り返らなかったのは、置いてきた未練を再び浮かび上がらせたくないからだ。思っていたより早かったなと感じるのは幻影の勝手な感覚かもしれない。その幻の姿は未だ見えないまま、もうあと数十秒後には消えようとしている。) 、 、 。(出せない声の代わり、見えない唇だけを動かした。大好きで大好きで、大好きだった彼の名前を噛み締めるように。足音がいよいよ背後に迫った瞬間、自らの足先から、身体がすうっと溶けるように消えていくのが分かった。) っ、(――伸びそうになった腕は、誰にも触れることのないまま消えていく。それでも詰めた息を吐き出すことはなかった。消える瞬間の幻影がどんな顔をしていたかは誰も知らない。でもこれは君の幻影のことだから、想像するならばどうぞ君の良きように。)
2022/1/15 22:54 [8]