(僕らのしゅうまつライフ)
tomori
2021/12/12 14:24 [51]
(宇宙の何かが乱れて、降り注ぐ隕石で地球はピンチなんだって、ニュースは大騒ぎ。どこか遠くの国にとびきり大きな隕石が墜落した時、ニッポンの人類の地球脱出計画は始まった。ごく普通の小さな町にも思いのほかスピーディーに順番は回ってきて、知ってる人も知らない人も一緒に大きなロケットに乗り込んで、こんなのマンガかゲームみたいだよな、ってきょうだいと笑って、それから。――それから。大きな衝撃と一緒にめのまえがまっくらになって、気が付けばひとりっきりだった。何が起きたのか教えてくれる大人だって、無条件にいっしょにいるものだと思っていた家族の姿だって見当たらないが、とにかく、少年は生きている。地球に墜落するなんて、俺も隕石みたいなもんだ。それも最後の隕石。あれからしばらくしてもうすっかり落ち着いたらしい空は、たったひとりの人類と、たったひとりの相棒のためだけに今日も晴れ始める。暫定、気が付けばふたりっきりの地球に、二度目の初夏がきた。)ん〜〜っ……ハオユー、ハオユー!朝だぞ、起きろよー(ぐうっ、と身体を伸ばしたら、テントから顔を出して早朝の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだ。結局のところ、滅びてしまうほどの被害は―少年の目で見る限りは―出なかったらしいこの国は、建物やら自然やらをほぼそのままの形で保っている。どこかのベッドでもゆっくりと休めるのだけれど、昨晩は「夏っぽくなってきたしキャンプしようぜ!」と思いついてしまったものだから、アウトドア用品店から拝借した大型テントの中での就寝。ふわふわとした親友のからだを揺すってかける声はすっかり元気な、体内時計推定・午前6時30分。)なあ、昼の暑い時間に動くのヤだろ、お前。朝のうちに色々やろうぜ、食料集めたりとかさ!(しろくろの顔を覗き込んで、愛すべき親友を今日の冒険へ誘う表情は朗らかだ。終末世界をおおむねエンジョイできている――元気でいようとする、たったひとつの理由は、こたえてくれるだろうか。)
2021/12/12 14:24 [51]
haoyu
ハオユー
2021/12/14 03:28 [79]
(人類は衰退しました──どころか、どうやら滅亡したらしい。『らしい』と伝聞なのは自分が生まれた時からそうだったからでもあり、彼からそう聞かされたからでもある。パンダとして、正しくはパンダの姿をした彼の友人というポジションの幻として生を受けたのだと、意識が芽生えた時には何故か瞬時に理解していた。そこから広い世界でひとりぼっちになってしまった親友の隣に寄り添うようになって、早いもので今年も憂鬱な季節がやってきたようだ。「テントじゃなくてふかふかのベッドで寝たいよう」やら「ぼくのかわいいからだがこんな寝袋に入ると思うの〜!?」やらぶつくさ文句を言いつつも、結局のところ大家族用のテント内で寝袋を敷布団代わりに彼の隣でその巨体を霰もない姿で晒していたパンダが一匹。あれやこれやと断るための理由は思いつくのだけれど、本来なら家族や人間の友達とキャンプしたかったのだろうなんて考えると、それ以上理由を列挙していくこともできず渋々といったていで昨夜は眠りについたのだ。)あさぁ……?(元気な声と揺れる身体にしょもりとつぶらな瞳をうっすらと開いた。朧げな視界に彼がぼやけて映って、その向こう側に入り口から漏れ差す朝日の光が見える。よく見えなくても、きっと彼のことだから朝早い時間なのだろう。そう察したのか、)うぅ〜……やだぁ、ぼくまだねむいから……(黒い手袋をはめた両手で顔を覆って起床拒否の姿勢。キャンプには付き合ってあげているのだからと、どうやらわがままを通すつもりのようでそのまま赤子のように身体を丸め始める。)ともりぃ……ごはんはまだあるよね?それに……(そこでちらりと手を広げて顔を見せて、)二度寝って言葉、ステキだと思わない〜?(純白の天使と漆黒の悪魔が共存する身体。どうやら今回は悪魔が優勢のようで、「ねえねえ〜」と片手で彼の手を掴めばゆらゆらと揺らした。)
2021/12/14 03:28 [79]
tomori
2021/12/16 02:01 [107]
(映画で見た世界の終わりはもっと壮大だったし、例えば授業で習った戦争はもっと凄惨だった。死体も焼き野原も兵器もない、ただ、人だけがぽっかりと消えたような光景は、それでもフィクションや歴史よりよっぽど少年にショックを与えた。ひとりぼっちじゃ立ちあがれないから友達を作り出すほどに、そして、それが幻であると理解する回路を止めてしまうほどに。そうこうしながら元気に今も生きている。そういや、隕石事件が起きなきゃ週末は家族で動物園に行く予定だったんだ。終末になってどうすんだよ。)お前が眠そうなのはいっつもじゃん、昼も夜もそう!(悪戦苦闘してテントを建てた昨日は、大きくもころんと愛らしい姿に向かって「寝袋無くても最近暑くなってきたし……てかパンダなんだからいらなくね!?」と何とも雑な説得を飛ばしたろう。すっかり見慣れたキュートな起床拒否に肩をすくめて、ため息まじりに文句を返す。)サボってたら俺がハオユーの分も食っちゃうぞ。それに、(本屋にも行きたいだとか、最近靴が窮屈だから新しいのが欲しいだとか、やりたい色々を並べ立てようとするけれど。伸びてきたふわふわ悪魔の手に片手をつかまれては、う、と一瞬言葉に詰まる。こと癒しにおいて誘惑の上手な親友と、感情が分かりやすく顔に出る少年だ。)そ、れはちょっと思......思う〜〜……、っけど!せっかく起きたんだから、なんか、朝がもったいない感じ、するだろ!……お前はしないかもしんないけどさ……(ぐぐ、と眉を寄せて葛藤するけれど、訴える曖昧な感覚も本当。うーん、と暫し手を揺らされたまま、けれど「あっ」とひらめくと次はこちらが小悪魔顔。)なあ、昼寝って言葉もステキだと思わないか?朝から頑張ったら、どっか涼しいとこでいっしょに昼寝しようぜ。約束(ぎゅ、と両の手で親友の手を掴んで、人参ならぬ笹をぶら下げるように囁いた。)俺、今日はショッピングセンターとか行きたいんだ。きっとふっかふかのベッドがあるだろうな〜?
2021/12/16 02:01 [107]
haoyu
ハオユー
2021/12/17 20:29 [122]
(世界で唯一のヒトである彼の相棒として生を受けたはずなのに、ヒトの姿ではなくあえてパンダの姿だったのにもきっと理由があるのだろう。例えばいやだいやだと駄々をこねて適度に休憩すように仕向けたり、例えば)ひ、ひどい……!ともり、ぼくのこと『ロクに働きもせずいつも眠そうに目をこすってるかわいいただのパンダ』だと思ってるんだ……!(かわいい姿で癒しを与えたり。そう信じて疑わないこのパンダは、今だってエーンエーンと黒の手袋を涙で湿らせる真似をして、そんな姿に彼が癒されてくれるだろうだなんて高い高い自意識で考えていた。そんなだったから聞こえてきたため息には心外だとでも言うように、泣き真似をしていたことすら忘れて思わず顔を彼の方へと向けて、むぅと黒に囲われて判別しづらい表情を。)ほらぁ〜。ともりだって……だって……(そんな彼が誘惑に堕ちる様子を打って変わって鼻歌でも歌いだしそうな心持ちで見ていたパンダだったが、葛藤しつつもなかなか肯定してくれない彼に雲行きの悪さを悟ったのか「アレェ……?」と戸惑ったような声も出すだろう。元気いっぱいの年頃の彼のことだ、もったいない気がするとは同意はできずともなんとなく言っている意味も分かる気がするから、慌てて追加の誘惑でも出そうと重い身体をうんしょと持ち上げた矢先のこと、)あっ?(ごろりと転がるようにして遠心力を使って起こした身体、彼の高い声にはてと首をかしげて見上げたなら、握られた手と彼の顔を何度も往復して、そして耳朶を揺らす言葉に息をのんだ。)〜っ!……………ほんとに?(たっぷりと考えた時間、その間にはウーンと唸る声も聞こえただろうし、揺れる心を表すように両手を左右に振ったりもしただろう。結局最後には彼の約束という言葉の真偽を問うて、)ぼく……ベッドで寝たい。それも涼しいところで!……ともりも隣で寝てくれる?隣だよ?(それなら行くよと言わんばかりに小さな声で尋ねた。一緒にいたいパンダのわがままを彼が叶えてくれるというなら、外の朝陽にも負けないくらいに顔を明るくさせて「じゃあはやくいこ〜!」とテントの入口へと向かうはず。)
2021/12/17 20:29 [122]
tomori
2021/12/19 19:22 [148]
(友達がまぼろしであることに蓋をすればこそ、動いて喋って気持ちの通じるパンダという存在はかなりのふしぎ。それでも驚いたのは初めだけで、すんなりすっかり慣れてしまったのは、やはり創造主であるからか。自分がしっかりしなきゃって思えるような、思わせてくれるような、それでいて癒しで憎めない親友。)なんだよー、人を悪者みたいに!(泣き真似にあきれるような所作をしてみせるけれど、かわいさへの自覚をおかしがる気持ちは、ほんのり上がる口角であきらかだ。お上手な誘惑に気持ちも手もうんうんと揺れ動きはしたものの、ごろん、とこちらへ転がるように身を起こした友に仕返しをしたなら、次に悩むのは相手の方。俺たち、何だかよく似てる。揺れ動く様子をにやにやと見守って、勝ちを確信したならもう一押し、「ほんとだよ、もちろん」と甘く囁いてみせよう。どこにいたって誰にも聞かれやしないのに、こそこそとないしょ話みたいなトーンで約束をした。)よし決まり!ったく、甘えん坊だなーハオユーは!あ、テント……はこのままでいっかぁ、帰ってくるかわかんないけど(片付けなくたって咎めてくれる人は、いやいや、実は奇跡的に生き残っている誰かが寝床にするかもしれない、くらいの希望を胸に抱いて、ちらと振り返って見た大きなテントは立てっぱなしで後にする。どこかで調達するつもりで、リュックに詰める食糧も最低限。拠点という拠点を作らず、転々と歩き回ったり、時には相棒に負けて休憩したり、そんな風にこの惑星で生き続けている。歩き続けていれば、何かに、誰かに、出会えるかもしれないから。ーー大きな道路脇に店が立ち並ぶ街。まだ風の涼しい早朝、だだっ広い車道の真ん中を歩きつつ、)やっぱ夏は朝に頑張るのが一番いいよ。あと夕方。あ、でも昨日みたいにキャンプできたら夜も楽しいな!(と、同意が得られるかは怪しいおしゃべりもしながら、3階建のショッピングセンターに辿り着いた。)到着!おじゃましまーす。お前ここ通れる?(ガラスを壊したところで、そこを通れば相棒のふわふわの手足が傷ついてしまうから、ホームセンターから調達したバールで通用口をこじ開ける。アニメやゲームでよく見る手法。)何売り場から行くかな。どこがいい?あ、いきなり休憩は無しだぜ(フロアマップを前に、釘を打つように人差し指をぴっと立てながら、親友の意見を聞いてみよう。)
2021/12/19 19:22 [148]
haoyu
ハオユー
2021/12/22 01:23 [177]
(言質を取ると、耳元でささやかれたわけでもなかろうにくすぐったそうに両耳を手でこしこしとこすりながら、喜色満面で準備をする彼を手伝おう。立ち上がってしまえば人間のこどもくらいの大きさのパンダだけれど、同じくこどもと分類されるはずの彼のことは見上げなければならない。彼の顔が遠のいていってしまうのは寂しいから、このあたりで申し訳ないけれど成長をストップしていただくよう、きっと同じく滅亡してしまっただろう神様に祈るパンダは道中も『甘えん坊』の言葉に相応しく彼の手を握っていた。かつてはそこそこ大きな街だったのだろうその場所に肩を並べる影は二つのみ。真っ先に出てきた「ホコ天だ〜」という感想も、空しく響いてしまうか。)キャンプは……ぼくはたまにでいいよ〜。何か月とか半年とかに一回するかしないかだからとくべつでたのしいんじゃない?(楽しくなかったとは言わないけれど、という前提がありながらも暫くはやりたくないと言外ににおわせて。でも結局のところ、昨晩の楽しそうな彼の笑顔を思い返せば付き合うのも吝かではないという思考になってしまうのだけれど。――自分のために苦労して開けてくれた扉を通れないとも言えずひとまず試してみたけれど、運動嫌いが過ぎてマシュマロボディに拍車がかかっていたのか手と顔だけ出して胴体がつっかえてしまって。「ともりぃ〜、ともりぃ〜」と泣きながら手を伸ばしてSOS。ようやく抜け出せたならおなかに手をあてながらマップを前に悩む彼を待つ。苦労もしたし早速お昼寝をするつもりが釘を刺されてしまえばわかりやすく固まったけれど、悩んだ末に)ここがいいなぁ、(と指を刺したのは映画館。フィルムも残っているだろうし、ボタンを押せばきっと以前と同様鑑賞できるだろう。)ぼく映画観たことないし、ともりがどんなのすきだったのか気になる〜。(アクションか、恋愛か、アニメか。少し不思議なんて評されることもあるSFは今の現実の方がよっぽど不可思議だろうけれど。彼以外の人間が生きた証を観るのも悪くない。とはいえいろんな施設があるのだ、数日はここにいるかもしれないし後回しでも勿論いい。どこに行ったとて、きっと数時間後には「やくそくしたもんね〜」と寝具売り場へと手を引いていくに違いない。彼の隣で丸まるその姿はきっと幸せ全開だったはず。)〆
2021/12/22 01:23 [177]
tomori
2021/12/29 23:43 [178]
言えてるけど何か月は空けすぎ、寒くてキャンプなんかできなくなるよ。夏のうちにもう1回はやりたいなー(広いホコ天を歩きながら、「次はマシュマロ焼くんだ」、と歌うように宣言する少年は、親友の性格を分かっておきながら巻き込む気でいっぱいだ。思い出は全部ふたりのものだって当たり前に思っているから。――入口につっかえるかわいいパンダの姿だって、カメラがあれば是非撮影しておきたいところだった。)ん゛、っふふ、ちょっと太りすぎ、ヤバ、これずっと見れる(吹き出したまま笑いを隠しもせず、ヘルプを出す親友に手は差し伸べど愛ゆえの失礼な感想をずけずけと。文句を言ったとしてもすぐに力が抜けたように笑ったりしながら関門を突破して、今日のぼうけんのちずの前。相棒の指した希望の場所に、「へえ?」と素っ頓狂な驚きの声を上げて。)映画?意外だけど……いいじゃん!初めての映画が貸し切りってわけね。何がいっかなー、何やってたっけな、あの頃(映画館に向かうのに、最新作を思い出すように"あの頃"へ思いを馳せるのもまた何だか不可思議。本当は生きるためのあれやこれやを調達するつもりの目的地だったのだが、コロッと意見を変えてしまうのは性格ゆえか少年らしさか。ポスターの中から選んだアクション映画をどうにかこうにか再生したら、「せっかくだから座席から見ようぜ」って映写室から鑑賞席へ相棒を急かすだろう。ふたりっきりの暗闇の中で、のんびり屋の君は眠らず楽しめているだろうかと、時折その顔を覗き込んで笑った。)――はいはい。超良い枕で寝てやろーっと(枕も布団も選び放題、そして抱き枕にはふわふわのからだ。うん、我ながらなかなかすてきな約束だったな、と満足げな寝顔はまだあどけない。生き抜くエネルギーを蓄えるための小休止も、君といっしょに。)〆
2021/12/29 23:43 [178]
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