ハオユー
2021/12/22 22:14 [15]
(のっしのっしと芝生を歩く。時には木に登って、時にはタイヤを転がして、疲れたらアスレチックで寝そべって休憩して。「パンダさーん!」と自分を呼ぶ子どもの声に振り返っては、首を傾げたり手を振ったりとファンサービスにも余念なく、そんな風に過ごすのどかで平凡などこにでもある休日のお昼前。おなかが減ったなと思えば自由気ままに笹を求めて再びのっしのっし。移動しながら、自分を熱心に見つめる観客をこちらも見返せばその中に一人、よく知る顔があった。)あれ?ともりだあ。(どうしたの〜?と観客の方へと向かうと、ところどころから歓声も聞こえてくる。が、そんな状況でももうこのパンダには彼しか見えていなかった。普通であれば簡単に外には出られないはずなのに、容易く彼の隣に立てたことを特に不思議にも感じずに)ぼくに会いに来てくれたの〜?(なんて手を握ってのんきに訊ねる。)そういえば家族で動物園にくるっていってたっけ。(いつだったかそんなことを小耳にはさんだ、そんな気がする。きょろきょろと周りを見てもその家族はいないから、もしかして迷子なのかもしれない。単に個別行動をとっているのかもしれないけれど、とにかく今彼がひとりでいることに変わりはない。人間であればにんまりという擬音がぴったりの笑顔を浮かべて)ともりひとりならぼくも一緒に行こ〜っと!それから、ご家族にもご挨拶しなきゃだしね!(いいでしょ?と断られてもついて行くつもり満々のくせして一応お伺いを立てるのだ。)
2021/12/22 22:14 [15]
(ここは週末の動物園だ、とすぐに分かった。ワイワイガヤガヤとした人の流れの中、となりにいるのは家族だって、顔を見なくてもわかる。うれしい。何だかいつもより自分の身長が低い気がするのと、懐かしい服を着ている気がする。そうだな、2〜3年前に着てなかったっけ?小学生の頃に。まあ中学校は行ったことないんだけど、何でだっけ?ひときわ賑わっている一角に、ふらっと迷い込むように合流して、気付けば最前列にいた。ころころでふわふわでマイペースなパンダ。そっか、みんなこれを見に集まってるんだ。でも何だろう、すごく見覚えがあるような、)! ハオユー。(やわらかくのびる声を聴くと、その存在が唯一のものとして名前を持った。こちらへ向かう迷いない足取りにも、握られた手にも、何の疑問もなくて、寧ろほっとしたような笑顔がかんばせに浮かぶ。)? 何言ってんだよ、お前が俺に会いに来たんだろ?またそうやって反対のこと言ってさあー(首を傾げて、けら、と笑いながら、胸の中から勝手に言葉が出ていっちゃうみたいな感覚で口を開く。やさしい反対ことばには覚えがある。抱きしめて甘えさせてくれているくせに、ぼくがこうしたいんだもんって言うような、それだ。)、あぁ!父さんと母さんと、兄ちゃん姉ちゃんがいる話もしたっけ?みんなきっとお前のこと気に入るぜ、みんな……(ぱっと明るくなった声は、はた、とフェードアウトして、静寂に消える。いつのまにか、周りの人混みから声がひとつも聞こえない。そういえばとなりにいた家族たちも見当たらないことに、親友の言葉を受けて初めて気がついた。)……みんな、にさぁ、会えるかなぁ?俺……たち。(ひとりぼっちになりかけた一人称に、小さくあなたの存在を足して、きゅ、っと白黒の手を握る。あれ、俺の手、大きくなってる。自分の体が、“いま”のものに、いつの間にかなっていた。14歳の姿で不安をこぼしても、園内へ歩き始めた足は止まらなかった。止められなかった。姿だけが見える知らない人たちは、何だかまるでゆうれいみたい。)
2021/12/24 17:52 [37]
ハオユー
2021/12/26 17:25 [57]
(今の状況を分かっていないような、心までも迷子になっているような表情に見えた。そんな彼が、自分を視認し名前を呼び手を繋いだことで、糸が緩むように笑顔を見せてくれる。そうだ、彼のこんな顔が見たくて、不安にさせたくなくて、ずっと彼を笑わせるために自分という存在がいるのだと、なんとなくだけれども唐突にそう感じた。)え〜?ん−、まあたしかに、ぼくはともりがいるところならどこにでも行くけど……(自分だけが彼を求めているわけじゃないはずだと少しだけ不満そうに口をすぼめながら、でも彼が笑うならそれでいいかなんて思っていたのに、まさか彼に迷子の自覚がなかったなんて。まずいことを言ってしまったといわんばかりに片手で口を覆ったけれど、その分彼と握る手にも力を込めて。不安そうな声、それと裏腹に引っ張られる足取りはどこか力強くて、彼の心のアンバランスさを表しているかのようだったから。)だあいじょうぶだよ!ぼくもいるでしょ?(手をくいと引っ張って彼の視線を求めたら、努めて明るい声で胸を張った。)ぼくはこの動物園でいえばともりよりセンパイなんだから!ご家族連れが行きそうなところだってたくさん知ってるし、ぼくには劣っちゃうけど動物園で人気な子たちもよく知ってるから、ともりのこと、きっと楽しませられるよ。(だからそんな顔しないでよ。足を止めて彼を抱きしめた。ふわふわで抱き心地抜群のこの身体で少しでも安心してほしい。加えて、)それにどうしても見つからなかったら、お姉さんに呼び出してもらおうよ。パパとママはきっと恥ずかしくってすぐにとんできちゃうよ?(冗談めかして、そんな言葉も。)
2021/12/26 17:25 [57]
はは、俺のこと大好きかよ。心強い相棒だなー!(どこか納得いかない様子にも聞こないこともなかったけれど、これ以上ないくらい素直に自分を求めてくれる言葉にからりと笑って、背中をぽんぽんと。俺も、お前ならどこにいたって来てくれるって、信じてる。今だって、親友に出会えなければ歩き出すことも――あれ、じゃあやっぱり、存在を求めているのはこちらの方?音のない人混みにそっくりな忙しないぐるぐる思考は、くい、と引っ張られた手で速度をゆるめた。足取りといっしょに。胸を張る親友に笑いかけなくちゃ。)ハオユー、……うん、そう、そうだよな!お前もいる、 ……お前しか…… 、!(上手に強がりきれなくって零れかけたつぶやきは、ふわふわのからだに吸い込まれた。数歩分よろけて止まったのは、14歳の少年の足と、渦巻いていた不安。)――、ぅん。(やさしいマシンガントークの語り主に、顔をうずめて、目を閉じて、すうっと息を吸い込んだら、小さくうなずいた。ふわふわの肩に手を置いてぱっと上げた顔は、にっ、と笑ってるつもりのそれ。ちょっとだけ下がってる眉は見逃してくれ。)っふふ、そんな父さんと母さんはちょっと見たい。でも怒られそうだからなー、なるだけ自分で見つけてぇな(おそるおそる、であることは悟られたくないお年頃なので思い切って周りを見渡してみる。声も音も発さないゆうれいたちと、柵の中でのんびりと過ごす動物たち。止まっただけの不安は消えてやしないけれど、何だか形を変えていくようだ。)……うん、どっかにいるに決まってる。ハオユーとなら見つけられそ。(言い聞かせるような響きは、徐々に確信を帯びていくように。だって、きっと大丈夫だって思いたい。お前しかいない世界でも。お前といるから。)
2021/12/29 22:49 [93]
ハオユー
2022/1/15 03:40 [124]
ともりだってぼくのこと大好きなくせに〜!(そこだけは譲れないと主張しつつも、背中に触れる手を感じて緩む目元は真っ黒な体毛でうまく隠れてくれただろうか。)――へへ、(抱きしめてから暫く、へたっぴな笑顔を見せてくれた彼を見てパンダも同じように返した。迷子になってこんなにうろたえるだなんて、ともりはやっぱりまだまだ子どもだなあなんて見当違いも甚だしいことを思いながら、それでも不安に潰されるだけではない彼の強さを眩しくも感じて。鼓舞するように、励ますように、今度はパンダが彼の背中をぽんぽんと叩いた。)怒られちゃうかなあ。うーん、ひとりだと可哀想だからぼくも一緒におこられてあげるよ。ぼくがごめんなさいってしたら、パパもママもメロメロになって怒るのわすれちゃうかも!(グッとまるで人間のように親指を立てる、あくまでも自意識の高いパンダだった。先ほどまでのお客さんの盛況っぷりも相俟ってさらに余計な自信をつけてしまったらしい。冗談なのか本気なのかきっと判断しづらいだろう発言を躊躇いもなく発しつつ、)へへ、責任じゅーだいだあ(自分を頼る彼の言葉には本当に嬉しそうに頬を熱くした。そうとなれば善は急げと彼の手を引いて様々なコーナーへと足を運んでいく。その先々で動物たちから話を聞いては、手がかりを辿ってまた別のコーナーへ。そうこうしているうちにどれほどの時間が過ぎただろうか、無事彼のご家族と合流できたのは結局園内を一周したパンダコーナーでだった。彼の背中を押して両親との感動の再会を演出した後は、有言実行して彼の隣で精一杯可愛く謝ろう。そうして忘れずに挨拶もするのだ、どうも、ともりの親友のハオユーです!と。)〆
2022/1/15 03:40 [124]