えんじゅ
2021/12/22 00:17 [3]
(そう言えば最近、己の名を呼ぶ時友は空咳をしていたような気がする。友の声を聞き慣れるのと同じにその咳の不規則なリズムも聞き慣れてしまったし、友の年齢を思えばまあおかしな事もないと野外に吹く風の音や雨音と同種に捉えていた──それは確実に冷えていく外気が冬の足音であるように、確かな不調の予兆でもあったのだ。ベッドに伏せる友の状況ははっきりしないから、独り言めいた声がポツポツと響く)最近は確かに秋めいていたけれど、ここ数日の気温の下がり方は極端に過ぎたね。……大人ともなれば寝ていれば治ると言うけれど、その辺りはどうなんだい、クリフォード(いつもの朝のルーティンの時間帯、友は起き出して来なかった。朝寝坊の毛玉がそれに気づくこともなかった。昼も過ぎて自然に目覚めた毛玉が寝ぼけた頭で思考を回すより先に酷い咳が断続的に響いた後、コップ一杯の水を求めてよろよろと現れた時にようやく気づいた有様だ。今は寝室に共にいる。幻とは言えプライバシーもあろうからこの毛玉は友の一日の締めくくりである日記を認める時以外寝室には来ない。閉ざされたが最後小さな身体ではドアノブを回すことすら出来なくなるから、今回は寝巻きのポケットに勝手に侵入した形だ。サイドテーブルの上にはとうの昔に飲みきって干からびたコップ。その隣にぽつんと座るアプリコットの毛並みは、たそがれ始めた陽射しを受けて今日もきらきら輝いている。日中伏せていた友の意識が浮上した頃合いで、毛玉がすっくと立ち上がる)やあ、気分はどうだい。僕は幻だから、申し訳ないことに看病ひとつ出来ない訳なんだけれど……もし僕が本物のハムスターだとしたらどうだろう。看病出来ないのは同じ事な上に、自分が飲む水だって用意出来ないからもしかしたら飢えてしまうかも知れない。そうでなくても夜中はきっと騒がしくしているだろうね、要は君の都合なんか考えず生きてるって事さ。──ねえ、幻というのも気楽なものじゃないかな(何かにつけて己を普通のいきものとして扱ってくれる友だけれど、今ばかりはそういう訳にも行かないだろう。要は何も気にせず養生して欲しい、と幻の利点らしきものをつらつら並べていく。手持ち無沙汰な時の毛玉はひたすら毛づくろいをするか、ぺちゃんこの頬袋から種を取り出してぽりぽりと齧っているかのどちらかなのだが、今は何もしていない。下ろしていた尻を上げて友の顔が見える距離まで近づいていき、サイドテーブルから覗き込むように身を伸ばせば油滴の瞳がその顔を映す。ハムスターというのは元来表情が分かりにくい生き物だが、少しばかりその眼差しは陰り、鼻粒は病の気配を探るようにぴくぴくと忙しなく揺れていた)
2021/12/22 00:17 [3]
クリフォード
2021/12/23 02:26 [19]
(若い頃は、と過去を羨む様になることが老いだというが、其れを痛感する日々である。体調管理は日課のようなもので地球が滅亡しようがしまいが健康が一番であるのはよく理解していたが、変化に対応しきれなくなるのが経年劣化の影響というもの。つまるところ、昨年は大丈夫であったが今年は駄目だった。そういうことだ。)随分と、ン゛ンッ、しょぼくれているじゃないか、友よ。珍しいことも……っ、あるものだな……。(声を出してみると思ったよりも掠れ、嗄れていた。どうやら声帯をやられているらしい。そうでなくても水分補給を怠った弊害か、カサついた口内は些か気持ちが悪い。乾燥した唇を舐め濡らすと少しだけ開きやすくなった口唇は細く弧を描く。)そうさなぁ、余裕がなくなると自分のことしか考えられなくなるし……実際放ったらかしだろう。自分が弱っているところに、さらに弱りきっていくものを見るのは大層堪えるな。その点、君はいつもつやつやとして、元気そうだ。(布団の中に横たわったまま、夕日を浴びて輪郭が輝くハムスターを眺めた。ふふふ、と小さく笑う音は控えめ。喉に響くのを気にしているように。かふと辛そうに呼吸をしては、身を捩って仰向けになる。古ぼけた天井を見つめ暫しぼんやりと黙り込むと、やがて意を決したように上体を起こそうとするだろう。ゴホッゴホッと数度の咳を挟みながらも、枕を背の支えにしてベッドヘッドに凭れかかるまで到達すればそこで一息ついた。)ふっ、ふう……老いぼれは何事も休み休みせにゃならんのが、もどかしい、な……。(ゼイ、と呼吸すると鳴る喉はやはり水分を求めているようである。ああ、水を取りに行かなくては。そう思うのにやはりどうにも億劫で、立ち上がるのを渋って、代わりに友の方へと手のひらを伸ばした。テーブルから落っこちそうな毛玉を手の上に招いたならば、そっと包むように片手を添えてなめらかな背を撫ぜる心算である。ささやかな温もりとて恋しくなるのは病で弱ったときには頓に起きやすいのだ。)
2021/12/23 02:26 [19]
えんじゅ
2021/12/23 22:57 [28]
そう見えるのかい、クリフォード?とりあえず用がないのにあまり喋るのは良くないよ。だって、『独り言』なんだからね(しょぼくれている、と評されると丸い瞳を意外そうにぱちくりさせて、喋り始めだからだろうか、床に就いた時より更にひび割れた声に忠言する。幻相手の独り言で症状を重くするのは好ましくない)僕が元気なのは君がそうあって欲しいと願っているからさ。弱り切ったものは見たくない、との事だからね──ありがたいことだよ。幻というのは便利なものさ。看病できないことを除けばね(窓に背を向けているから己が輝けるものになっている自覚はない。毛並みを褒められて悪い気はしないが、体勢を変える気らしい友には気遣うような視線を投げることしか出来ない。仮にこの小さな身体が実体であったとしても、出来ることなんてたかが知れているが)寝ていた方がいいんじゃないかい。それか、今のうちに水を取りに行くとか(例えば、緩やかに安静や水分補給を促すこととか。振り返って、自分が立った時の全長と似たような大きさの空のコップを見つめる。今の友の状況だとこんなものでは到底追いつかないだろう)休み休みでいいじゃないか。今君が休んでいたって誰も困らないんだもの。ニワトリだって1日2日餌がなくたって何とかやっていけるだろうしね。──どうしたんだい(伸ばされる掌は救出の受け皿であり、この小さな身を運んでくれる乗り物であり、素敵なベッドにだってなる。招待に応じながらも問いを投げては桃色の手がひょいと友の掌に渡り、両手両足が乗ればもふもふした見た目通りの重量が感じられるだろう。警戒の色などまるでない信頼の重みだ。もう片手で包まれるとハムスターの性とでも言うべきか何とも言えない安心感でぺたりと腹を友の掌に付け、撫でられる度にサテンの手触りはとろけるように平らになっていく。友に発熱の気配があってそれが掌にまで籠るのならば平熱が高いこの毛玉は珍しく冷えて感じられるし、そうでないならいつものようにほっこりと温かな小動物の熱が伝わるだろう)ううん、僕を寝かしつけてもいいことはないよ。それに今朝はたっぷり眠ったからまだ眠くないんだ……(寝るか食べるか遊ぶかを永遠に繰り返す毛玉だから、撫でてくれる優しいリズムに油滴の瞳が細くなる。いつもたっぷり眠っている癖に嘯いて、自らの眠気を覚ますように頭を持ち上げ)さあ、水を取りに行くんだ、クリフォード。ポットかペットボトルが望ましいね。余裕があればジャムを舐めるのもいいんじゃないかな(するすると促すのも幻の務め。病に鈍っていても思いつける、とりあえずの応急を並べていく)
2021/12/23 22:57 [28]
クリフォード
2021/12/25 22:53 [52]
話すということは大事なことさ、それは今の私はよく知っている。独り言だとしてもね。まあ……少し億劫なことは否めないから普段のような会話は控えるが──私の代わりに君が語ってくれるかい。そうだな……ハムスターは夢を見るのか、だとか。(しょぼくれていると称しても話し始めれば和らいで見えて、少し笑ってしまった。自身を反映しているとすればどうにも思ったより堪えているのやもしれない。ひとつ失えば治るとも分からない老いた身だ。喉風邪などこれまでに幾度となく経験してきたが、少しばかりの感傷を思わせるには十分であったらしい。長らく一人でいることで言葉を忘れたようになる現象には覚えがある。「おーい」「誰かいないのか」その二つだけを発していたに近い数年間が苦々しく思い起こされては、程なくして話を促すように黙り込む。発光しているような毛玉のうらにちょうど反射するようにして置かれていたコップがためにいやに眩しかった事を知る。)あぁ、私は喉をやられると熱を出して声を失って咳を出して治るからな。あともうひと踏ん張りさ。(友は常日頃に急かすようなことも言わず、かと言って怠惰も促さないが、今日ばかりは何となく甘やかされているような気がする。柔らかな微笑みが手のひら一つ分の温もりに注がれると、不可思議に液状化したみたいにのっぺりとする毛並みを心ゆくまで撫でる。発熱の程度は体感でいえばそれほどないが、寝起きであることを考えるといつもよりはぽかぽかとしている。午睡のお供にはならないらしい抵抗に手のひらを開き、「君の言う通りにしよう」とばかりに含み笑いで頷いた。眠ることも大の得意なネズミの癖にどうやら心配をかけているらしい。)ポットに汲んでくるか。あぁ、ジャム……ケホ、んん゛!こりゃあ……明日の朝が辛いな……。(片手にハムスター、空いた片手で壁に手を付き支えとしながらよろよろと部屋を変える。日々の営みで結局よく使われるのはキッチンであり、倉庫だ。友の希望があれば途中で下ろしてやり、特になければ寝間着のポケットに移動させる。水は両手で汲まなきゃならぬ。ついでに進言の通り、マーマレードに類するものがないかを瓶詰めの棚から探す。ゆずや金柑なんてものがあればよいが、かろうじてレモンなどの柑橘系のピールを保存しておいたものが見つかった。雑多なのは豊作とはいかなかったときの名残であるからだ。少し面倒だが湯を沸かし、ふやかしなから蜂蜜も垂らしてちびちびと啜る。食道を温かいものが通っていくと安心した心地になるのはいつ何時でも変わらぬことだ。)干した野菜はまだあったか…。持っていくかい。(友にはついでに見つけた乾物の処遇を託した。なんでも取っておこうとする己の癖が、そこいらじゅうに散らばっている。)
2021/12/25 22:53 [52]
えんじゅ
2021/12/26 22:24 [61]
確かに、言葉は使わないままでいると道具と同じに錆び付いてしまう。独り言も善し悪しかな。……僕の話?──不思議な注文だね、全ては君の中で完結していると言うのに。……それはそれとして、夢か。どうなんだろうね。分かりやすい夢は見ていないんだろうけれど──起きている時と変わらず、走ったり、何か食べている気はしているよ。小動物というのは生きるのに一生懸命だから、きっと思考に余白がないのさ(毛玉は幻だから、友の孤独を知った風な口を利く。油滴の瞳を瞬かせては幻の語りとは、と首を傾けるが、すぐに小さな口は澱みなく滑り出す。もし友がこの毛玉の眠る様子を眺めたことがあるのなら、寝息を立てながらまるで歩いているかのようにもぞもぞ手足を動かしたり口をもぐもぐさせているのを労せず見ることが出来たはず)君がルーティンワークを好きなのは知っているけれどね、風邪までルーティンしても辛いだけだよ。治ったら薬の類を見つけておくべきだね。本格的な『家捜し』めくけど、今更だろう?(そう踏ん張ってばかりもいられなかろうと、個々の家への侵入を勧める。薬を探す絵面は決して宜しくないが、物資のためだ。とろとろと撫でられれば広がるサテンは友の指にやわらかくうねるし、いつもより温かな掌は昼寝の誘惑としては最適な刺客だった。それを何とか退ければ、掌の上で座り直す。何がおかしいんだい、など聞きながらも進言は聞き入れられたようで、覚束なく立ち上がる友が己の輸送もこなそうとしているからポケットに入れてくれないかと要望を出す。熱の篭ったポケットはやわらかく温かいが、顔を出し両手を布の縁に置いて、たとえ出来ることがなくとも異変がないかはしっかり見張ろう。いつもより緩慢な手つきで、湯気立つ蜂蜜湯が完成したのをポケットから見上げれば、例によって寝巻きの生地でのクライミングを試み、やがて腰掛けている太ももへ到達すればぽてっと座る)僕は幻なんだから放っておいてくれていいんだよ。……それで君が満足出来るのなら、少しばかり貰いたいところだけれど。あと、君の飲み物がどんな出来栄えか味見をさせてくれるかい?(幻であることを明言するのは突き放した態度であるという自覚はあるらしかった。ひねた物言いと共に、鼻粒をひくつかせてキッチンに漂う甘みで包まれた爽やかな香りを追う。いつも友がきちんと自分の分の食事も用意してくれているから、こうして相手の食すものを直接ねだるのは珍しいことかもしれない)
2021/12/26 22:24 [61]
クリフォード
2021/12/28 22:12 [82]
ふふふ、生きるのに一生懸命か……。それはいいな。今の私のようだ。だから君がいるのかもしれん。(こまごまとして忙しないハムスターの生活。同じだと思ったことは今の今までなかったけれど、純粋な生にしがみつく様で言えば少しだけ親近感を感じさせた。「君の寝相の理由が分かったよ」眠っている時の手足の挙動や口元の運動も、はじめの頃になぜイマジナリーフレンドとして生まれたかの疑念と謎を解明しようとして、よく観察したときからしっかりと覚えている。飾りのようなしっぽと似通った耳のぴるぴると動く仕草は、あれで警戒していたり周りの情報を得ようとする行動らしいと知ってからは、無駄なものはこの世にないのだなあと思ったものだった。ただの愛らしさの象徴ではないかと疑っていた節がある。手の上のハムスターが態度を大きくするなかで、しかし頼もしさを感じているのは黙っていた。イマジナリーフレンドとしてのこころの相棒は間違いなく勤まっていたから。)病も怪我も癖になるのは確かに避けたいところだ。ううん、まだ期限が残っている薬があるかは怪しいがね。(捨ててはいないからどこかにあるかもしれないが、管理外の物資が無事である保証はない。こういうのがあるから老体の孤独ぐらしは過酷だと思い知らされる。ずず、と少し行儀悪く熱い湯を啜る。割と美味しくできてしまった。こういう細やかな喜びと幸せがあるからまだ死ねぬとも思うわけだが。)前も言っただろう。友を慮ることは余暇なのだよ。まあ君を気に掛ける度、凝りずに『幻にすることではない』と言ってくるそんな掛け合いを面白がっている節はあるんだ。(つるりと普段言わないようなことを滑らせる。熱が上がってきたのか、舌の根が浮かされでもしているのか。はは、と誤魔化すように小さく笑い太ももの僅かな重みに再度手を差し向ける。つままれるのが嫌なら自ら腕を梯子にして登ってこよう。彼の場合の正しい食卓の囲み方はテーブルの上に乗ることだと思っていた。故に、普段は整頓されているが今はぞんざいに先程沸かしたポットや瓶が置かれたままの机上に友を招こう。)勿論だとも。しかし温かい飲み物は……ふむ。(ティーセットの中から小さなミルクピッチャーを取り出す。その中を先程作った蜂蜜湯で満たしたら、友用のマグカップのできあがり。即席にしては案外サイズ感も合っていそうで、ミニチュアサイズのおままごとのような風情に小さく笑った。す、と友の前に差し出してから、まだまだ痛みそうな喉に直接スプーンで掬って蜂蜜を垂らす。「どうだい、お味は。」と聞かないまでも、風邪で鈍った舌に丁度いい少し強めの甘さが伝わる筈だ。人間とハムスターの舌のつくりの違いまでは知らないが。)
2021/12/28 22:12 [82]
えんじゅ
2021/12/29 22:32 [92]
加えて君には余白がある。僕がいるというのはそういう事だとも思うよ。何にせよ、君が健全に生きられているのは何よりさ──今はちょっと、そうでもないけどね(寝相については「見てたのかい」と、大して不快そうでもなく言う。観察される眼差しが強かった頃は近いなあ、とか緊張するね、とか、さらりと流しながら暮らしていた。友の心毛玉知らず、ポケットの飾りボタンが大変気になって歯を立て引っ張ると思いの外引き寄せることが出来る。糸が緩んでいるらしかった)プラシーボ効果とも言うじゃないか。効果がなくてもそれっぽいものを飲むというのは無駄ではない気がするよ──もちろん期限が切れた薬を飲むというリスクは保証出来ないけれどね(ものを口にするのは活力の証だ。太ももの上、鼻先で両手をもにゅもにゅ揉み合わせて毛繕いの前準備が始まる。友が目ざめた直後のぽつねんとした有様は消え失せた様子)確かに余暇は大事だね。子どもがぬいぐるみを構うのと同じで、幻を構うのも同じような事なのかもしれない。子どもは自分の都合でぬいぐるみを放り出すけど君は律儀なことに……へぇ?(一貫して己を生物として扱う友の真面目さは好ましい。出会った頃は文献を捲る机にちょこんと座ってほらこれだよ、だなんて鼻粒でハムスターのページを指し示したものだ。そんな幻との掛け合いは面白いものらしい。毛繕いの手を止めたねじくれた体勢のまま不思議そうに友を見上げた)それは何と言うか……意外だね、クリフォード。我ながら、君にとっては楽しい台詞ではないんじゃないかと思っていたけれど(差し伸べられた腕にはっしと捕まってせっせと登る。人で言う項の皮はだるだるだから余裕でつまむことが出来るが、初めてやられた時に「……やめてくれないか」と比較的本気のトーンで抗議したのも思い出である。『良き』は付かない。そうして到達したテーブルはいつもより雑然としていて、何となく心が躍る)やけどする訳じゃなし。……ありがとう。ふふ、奥方が見たら何て言うかな(小さなミルクピッチャーに蜂蜜湯を満たす仕草は当然にちまっとしたものだろうから、そんなコメントを添えながらも礼は忘れない。差し出された小さな器に揺蕩う金色の液体にふんふんと鼻を鳴らしては片手を添えて、ちるちると舌先で甜める。食べられるものなら何でも食べる、そして何故かおいしいものは知っている。甘くてほんの少し残るピールの苦味は、現実のハムスターと同じに堪能出来る)──うん、おいしいよ。いくらでも飲めそうだ。君は何だかクマのようだね(ほう、と人間臭く一息ついては蜂蜜を直接流し込む友を見上げる。その距離を縮めるべく、ピッチャーを慎重に鼻先で押して傍へ寄る。つまりは友が望めば手軽に撫でられる距離へ)
2021/12/29 22:32 [92]
クリフォード
2021/12/31 22:17 [109]
尽きない心配のためにも早く治すさ。案外きちんと食べてはいたからそこまで厳しいことにはならないと思うんだけど、(衣替えが甘かったか。友のような毛皮を被っているわけでもなし。今後の算段が立てられるほどには溌剌としてきた思考を整えながら、ポケットのうごめきに視線をやった。何やらモゴモゴしているなと思ったからだ。ボタンを留めているほつれた糸の端っこをつまむと釣れるように毛玉の頭がチラリと見えた。指先でその頭をうりうりと撫でてボタンはそのまま取りあげてしまおう。ソーイングセットは書き物机の引き出しの中だ。)なるほど。ままごと遊びは経験がなかったが、私にも娘がいたらもう少し上手かったかもしれない。(もはや遠い我が家には息子たちに恵まれた思い出が残っていただろう。感傷に浸るための宝物は一冊分のアルバムだけを持っているけれど、それを開いて過去の思い出話をする夜は一体いくつあっただろう。少なくとも妻のことを日常に口にすることは自覚している。)君が幻なのは事実だろう。しかし君がいなくなったら寂しい。だからといって何かを捻じ曲げるつもりはないよ。君と過ごした時間はありのまま覚えておきたいというだけでね。こうやって話をすることがこんなにも容易にできるというのに、ぶっきらぼうに無視をするには今の時間感覚は暇すぎるんだ。(妻に、あるいは息子に。こんなことがあったのだよと話す機会があるのならハムスターの友のことはいの一番に共有したい。幸福の単価はその時の環境次第。不幸でないことをイコール幸せに換算することはあまりにおめでたくも、生き足掻いた先になぜだか長閑で奇妙な共同生活があったことは、きっと妻なら喜んで聞いてくれるに違いないのだ。なんでもできたが不器用な気遣いが抜けない男がちまちまと用意したミニチュアの容器はおそらくこれからも増えていくのだろう。そういう趣味を見出してしまったが最後、他にすることもない。美味しさを同意してくれると胸のあたりが暖かくなる。彼の頬袋は無限大だとしても、つい同じ食卓から彼の分を分けてしまうのと動機は同じだ。)蜂蜜が好きなのは確かに自然界では熊だろうな…。(薬を飲むように少し喉に蜜を滞留させながら、片付けは明日の自分に任せて最低限の整理を行なって机の上の友を見た。皺の寄った眼差しが確かに小さな毛玉に焦点を合わせる)……もう一眠りだ友よ。君の得意技を見せてもらおうじゃないか。(人差し指が友の頭をくるりと撫でて喉のあたりの一際ふわっとしたところをくすぐる。気が済んだところで行きと同じように手のひらに招いて、寝室までご同行願おう。どちらが先に眠ってしまうかは、今日ばかりは良い勝負になるかもしれない。)〆
2021/12/31 22:17 [109]
えんじゅ
2022/1/1 22:20 [113]
そう、君の規則正しいルーティンも立派な健康の秘訣だと思うよ。物事はリズム良くこなせば……あっ(自堕落な毛玉が偉そうに語るうち、ボタンがくいと引かれて釣られる。小さな額をうりうりされてしまえばなすすべもなく、ボタンは頬袋ではなく友の反対側のポケットへ収まることになるのだろう)もう少し……どんなお手前かぜひ拝見したいものだね、君はとても良き父親だから、素晴らしいお相手になったろう(息子と遊んだ思い出だって、妻と語らった事だって聞かせてもらったから。何故か裏声で人形のセリフを言う友の姿を想像してしまったから、少しばかり声が震えるのは許して欲しい)……なるほどね。確かに例え幻でも無視されたり冷たくあしらわれたりするのは良い気持ちではないんだろう──なんて、想像しか出来ないのも幸せな事だね(自分は幻だから。だからこんな事はしなくていいんだ、などなど宣うのにいざその通り放置されたらきっとそれなりに寂しくはあるのだ。暗い想像が想像でしかないことに油滴の瞳をきらめかせ、今や自分用のマグカップと化したミルクピッチャーにそっと両手を置いた。自分用の小さな皿、ボウル、マグカップ。増えていく細々とした品にやれやれ、とあるのかないのかの肩を竦めながらも友が設えてくれた食卓を共にするのは確かに楽しいひと時だから。熊は年中喉風邪なんだろうか、だとかしょうもない推察と共にちるちる舐める蜂蜜湯。周囲で発生する簡単な片付けをよそに頬袋にしまっておけないそれを大事に飲み切った頃、一段落の気配に顔を上げて友の視線と真っ黒な眼がかち合う)なるほど、なら僕の素晴らしい眠りっぷりをお目にかけるよ。ここしばらくは見ていないんじゃないかい(出会ったばかりの観察の一環ならばさておき。小さな額とふわふわの喉元をいじられるとくすぐったいよ、と小さな手で無駄な抵抗を試みるが既にただのじゃれ合いだろう。そして手のひらに収まって、共に寝室へと向かう。寝場所はサイドテーブルを希望して、ついでにティッシュ数枚を置いてもらえればあとは勝手に別荘の建築に勤しむだろう。そのかさこそとした音が友の眠りの妨げにならないことを願おう。眠りについたのはきっと友が眠りの闇に落ちるのと同じ頃だ。目覚めた友が真っ先に見るのは、ほわほわのティッシュの塊の中できゅっと丸くなって寝息を立てるアプリコットの毛玉だ。その頃には、咳も熱も少しは収まっていると良い)〆
2022/1/1 22:20 [113]