(真冬らしからぬ暖かな日差しに照らされて、気づけば小さな港にふたりでいた。周りをぐるりと海に切り取られた陸地は、彼女の運転する車でなら半日もあれば一周できてしまいそうだ。ゆうべもその中で眠ったはずのキャンピングカーは、けれど辺りには見つからない。アジサシが何羽も頭の上を飛び、キュイキュイ、ゴェゴェと鳴いている。)ネイ、メリーが眠っているあいだに運転したの?(不思議と今日に限って、思うことがそのまますらすらと淀みなく口から流れ出した。嬉しくなる。せっかちだけれどこちらの言葉にはいつもちゃんと耳を傾けてくれる友だちの返事はない。)ネイ、……ネーイ?(ぼーっとしているのかなと前に回り込んでその顔を覗く。特段変わった様子はなく、元気そうだ。でも目が合わない。目の前で手を振って、気を引くように袖を摘んで。それでもやっぱり返事はない。)………………ネイ………。(途端心細くなって唇を噛んだ。どうやら彼女には自分が見えていないらしい。少し汗ばむような気温だ。辺りには建物も多くないが、少ない中にも廃墟特有の物寂しさや雑然とした雰囲気が今ひとつ感じられないのは明るい陽光のせいだろうか。──「おーい」と、向こうから、彼女のではない声がした。)
2021/12/22 14:11 [6]
(気付けば小さな港にひとりきりでいた。ここはどこだろうと思うまでもなく、向こうに広がる海の青さやアジサシの鳴き声が告げていた。自分が生まれた場所。いわばふるさとというやつだった。)メリー?(いつもなら傍にいるはずの友人の姿が無いことに、当然ながら不安になる。名前を呼んだところであえなく返事はない。しかし、誰かの声が聞こえたのもそんな瞬間のことだった。いや違う、誰かなんてものじゃない。)……ま……(声の方へ、はっと弾かれたように顔を上げて目を瞠る。ママ、と力なく低い声がこぼれた。自分とは正反対の黒髪を揺らして、手を振りながら小走りで、まるで当然のようにこちらにやってくる。信じられない光景だった。そもそもこの場所に立っていること自体がありえない。だというのに、母は「待たせてごめんね」と陽気に笑いかけてくるものだから。)──や、へいき。帰ろっか。(自分も当然のようにワゴン車のドアを開けた。パートさんからもらったのと、ビニール袋の中ではち切れんばかりのパイナップルを示され、苦笑いする。もはや棘がビニールを突き破っていて危なっかしいので、後ろに置いときなよと後部座席のドアを開けたりと、ややあってから車を走らせた。)ごはん何がいい?昨日のじゅーしーは出すけど。(冷房のきいた車の中で、そんな他愛ないことを問いかけた。朝ごはんなのか昼ごはんなのか晩ごはんなのかはどうでもよかったけど、母が仕事の日は自分が食事当番だ。だけど母は優しげに笑って、決まってなんでもいいよと返す。)だからそれ一番困るんだって。(自分も大概食べたいものなんて思い付かないから、誰かに決めてほしいのが常だ。うーん。何やら悩ましげな声を上げ、ハンドルを握りながらこつこつと人差し指で叩いた。)
2021/12/23 01:48 [18]
メリー
2021/12/24 05:47 [32]
まま……(知らない概念、聞き覚えのある響き。どこでだっけと振り返る間に、ネイでもメリーでもない誰かが駆けてくる。初めへなりと萎れて落ちていくように聞こえた友だちの声は、すぐにも平静を取り戻したようだ。)それなあにぃ?…………わあ!……食べれる?(ゴツゴツした袋の中身を覗き込み、その武器めいたビジュアルに目を見張る。どちらからも反応はないけれど、ふたりの間に立ってみると一丁前に登場人物のひとりになった気分。置いてかれちゃうと慌てて後部座席にすべり込み、荷物が崩れないよう押さえている役目を買って出ることにした。)ネイー、メリーじゅーしーって知らない。昨日のごはんはじゅーしーじゃなかったよお。(残るほどあるものなんてビスコくらいだ。冷房の風がそよそよと前髪を揺らす。もうなんとなくこの場所のことわりを理解しながらいつもより縮こめた触腕。かちかちボタンを押してみても後部座席の窓は開かない。)お鍋がいいよ。この前の魚と、貝のお鍋もおいしかった。でも……暑いかな? メリーは氷砂糖もすき。ゴマがついてたら乾パンも食べる。(そらきた自分の役目とばかり、終末メシをご提案。おいしいものならいくつも友だちが教えてくれた。ねえ)ネイ。(呼びかける。返事はない。“いつも”を取り戻したような彼女がそこにいる。メリーはじゅーしーも食べてみたい。メリーもいっしょにお喋りしたい。メリーはさみしい。メリーは、でも。ネイがさみしくなければいい。袋越しのパイナップルを、犬猫にするように撫でてみる。)
2021/12/24 05:47 [32]
──あ。(こつんとハンドルを突いていた人差し指が、ぴたりと止まる。「鍋とか?」ふと思い浮かんだメニューを母に投げ掛けた。一年のほとんどが暖かいこの島で、ただでさえ母と二人家族だ。鍋を囲んだ記憶は決して多くはなかったけれど、なんでもいいと言うだけあって母が反対するはずもない。鍋いいねと穏やかな母の声が返る。母と暮らしていたときの、実にどうということのない記憶と感触が、なんの違和感もなく意識に馴染んでいった。車で海沿いを走る内、ぽつりと点在する廃墟のなか、未だ唯一崩壊を知らない建物が現れるだろう。元から寂れた花ブロックに囲まれた、母が祖父母から譲り受けた赤瓦の平屋。言わずもがな、自分の実家だった。)なにもしなくていいからね。(台所に立つなり様子を見にきた母に釘を刺す。母の座っていられない性分を無視して、こんなぶっきらぼうな言い方しか出来ない。猫の形をした醤油差し。冷蔵庫に貼られた写真は、今より少し若い母がそっぽを向く幼い自分の肩を抱いている。所在無さげに、台所に通じた居間へ追いやられた母は扇風機をつけてから、適当にテレビを見始めた。『今から数年後、世界は滅びる』ホームレスの大真面目な予言を面白おかしく編集した番組に、母は本当だったら怖いねと軽く不安がっている。)それ嘘だよ。(ばっさり言い放ったのと同時に、魚の頭を切り落とした。今日は海鮮鍋だ。材料が用意できたら、居間のテーブルにガスコンロを出して、二人分のお箸と取り皿、それからレンジで解凍した炊き込みご飯を並べて──「いただきます」親子二人同時に手を合わせてから、鍋をつついた。)……うん。うまい。(新たな発見でも受けたみたいに瞳を瞠らせる。魚の出汁を吸った白菜をふうふう冷ましながら、母も喜んでいるようで、ふっと笑みがこぼれた。そんな仕草のついでで、まったく癖じみた一言が口を衝いた。)メリーも美味しい?(同じくして癖みたいに隣を見たけれど、当然ながらこの家には自分と母以外誰もいない。返事もあるはずはない。何を言ってるんだろう自分は、そんな奇妙な感覚だけがすっかりと残って神妙に沈黙したが、打って変わって母が笑い出した。そして意味の分からないことを言う。和室にいるんじゃない?)……は?
2021/12/26 19:40 [59]
メリー.
2021/12/27 14:46 [67]
(鍋の言葉が彼女の口から聞こえると、ぽうっと浅はかに黒く染まって手を叩く。誰にそそのかされるでもなく、肌寒くうら寂しい世界で食べるのに彼女が思いついて作りがちの料理が、今ここでひとりでに浮かんできたってなんの不思議もないのに。)まま?メリーといよっかあ。(台所から追い出された謎の誰かを励ますように届かない声を掛けるくせ、視線はあちこち、見たこともないものたちに奪われている。深刻なんだか半笑いなんだかわからないような仕立てで滅亡の日を語るテレビ番組。くるくる回る扇風機のプロペラ。静かな稼働音で鳴く冷蔵庫。とりわけ熱心に見つめたのはその扉に貼られた写真。)これ、ネイ?ちっちゃーい。(彼女が何事か断言するのと声が重なる。質問に反応がないことにはもう慣れてきてしまった。今と同じに少しそっけないところがあって、今よりもその表し方が幼げなこども。これならメリーより小さいくらいだ。アクセルにもブレーキにも足が届かなそうだし、彼女がいくらせっかちでもこっちが抱えて進む側。まま≠フ前にいる彼女は、どこか少しこの小さな女の子に戻ったみたいな感じもする。)…………え?(見たところ自分の分の用意はないようだったのでご相伴に与らずにいたごはん。感想を問われて目を丸くする。おいしそうだねえ、よかったねえと立ちのぼる湯気ににこにこしていた能天気さがふと揺らいで、茶色と黒のマーブルになる。ネイ、メリーがわかる?ネイ、メリーはここだよ。すらすら紡げていた言葉がなぜだか喉から出なくなって、ぱくぱくっと死にかけの金魚みたく口だけ動かす間に、まま≠ェ不思議なことを言う。)── っ !( ここだよっ!と張り上げたはずの声は自分の耳にも届かない。まるで宇宙に、真空に放り出されたように。ワシツじゃないよう、ここだようとあっさり情けなくべそかきながら、そこにいるらしいメリーの姿を確認しに行くことになるだろう。)
2021/12/27 14:46 [67]
(誰かに──あるいは何かに呼ばれた気がしたのと同じくして、視界は真っ白な光に放り出され、そして眩しがる間も無く景色が一瞬のうちに移り変わる。南国の湿っぽさを含んだ藺草のにおいがなつかしい。いつの間にか立っていたその場所は、母と自分が寝室として使っていた和室だった。何度も寂しいって一人で眠った部屋だった。いや、きっと一人じゃなかった。隅っこの段ボールの中にしまいこんでいたそれを、母は取り出したらしい。開いた押し入れを背後に母が言う。大事なお友だちだったでしょ。)……メリー。(母の手の中におさまっているのは、ふわふわしたココア色のロングヘアがかわいい、女の子のぬいぐるみだった。瞳にあつらえられた紫色のボタンとふと目が合う。名前はメリー。どこへ行くにもいつも一緒で、幼い頃の自分はメリーだけが友達だった。近所の男の子にからかわれてメリーを取り上げられることが多くなって、いつからか家に置いていくようになった。男の子よりも背が高くなって、からかってくる奴の歯を折るくらい乱暴者になった頃には既にもう、必要すらなくなっていたけれど。「メリーと一緒なら、ひとりでお留守番できるよね」やさしく言い聞かせるような母の声に、先ほどまで大きく見下ろしていたはずの母を、首が痛くなるくらいに見上げる。夕焼けに照らされた母の笑顔が見えた。)うん。できるよ。(本当は抱っこしてほしくて上げた両手でメリーを受け取れば、ぎゅうっと自分の胸の中で抱き込んだ。それでも空がオレンジ色になったら、綺麗なドレスに身を包んで仕事に行く母を玄関までお見送りする。それがまるでお姫様の召し使いになったみたいで胸がはしゃぐ、幼い頃の日課だった。)めりー。今日はなにして遊ぶ?ねーはね、貝がら拾いたいなぁ。(海に行きましょうねとサンダルを履いて外に出る。鍵の掛け方なんて知らないけれど、そんなの気にせずメリーを抱いてすぐそこの海に走って、真っ暗になるまでふたりで遊ぶ。たまに大人の人がこっちを見てきて、なんだか嫌な気分になって逃げる。そうやって過ごしているうち飽きたらやってくる、寂しい時間。)めりー。まま、もう帰ってくるかな?(浜辺でうずくまりながら、波の音に打ち消されそうなぽつりとした声を、飽きず胸のうちに抱いたメリーに落とし込む。何かにずっと触れていたくて、ただひとりの友達のふわふわな髪の毛を撫でた。)
2021/12/29 04:08 [87]
メリー
2021/12/30 13:13 [99]
(メリーでないメリーに一言物申してやろうと息巻いていたはずが、ふと一切の身動きを取れなくなる。それを望んだのではないふうに伸ばされた小さな両手に受け渡されて、自分はボタン目のメリーだった。二本の足があり、長い髪を持つ。冷蔵庫の写真の中と同じくらいか、それよりもっと幼い友だち。)まま、行かないでえ。やーだ。ネイがさみしいでしょお。(お利口に母を送り出そうとする少女の腕の中から、瞬きもしないボタン目と刺繍されただけの口でわがままを言う。親だって小さな子を置いて行きたくて行くんじゃないとか、お金を稼ぐのだって子どものためだとかは知ったこっちゃないのだ。メリーはネイの友だちなのだから。とは言えこの声は大人には届かないから、ままは行ってきますと娘の頭を撫でるだけ。)いいよ、岩がゴツゴツしてるほうには行っちゃだめ。ころんだら痛いからね。ネイ、メリーにちっちゃな巻き貝を見つけてよ。かみにかざったらかわいいでしょう。(この声は友だちには届く声。ぬいぐるみってそういうものだから。彼女が両手を使って遊ぶときには弁えて砂浜に転がり、口だけ出すしかないけれど。)どうかなあ。もうちょっとおそくなるかもねえ。きんようびっていつもそうじゃない?でもきんようびだから、明日はお店がおやすみだよ。ねえ、ネイ。(とっぷりと日も暮れて、さすがに涼しくなってきた浜辺。子ども特有の高い体温に包まれてこちらは温かいけれど、うずくまる彼女の背中を温められないことがもどかしくなる。励ますようにかける声。良くも悪くも気にかけるようにこちらを見てくる大人の人通りも少なくなってきて、たまに見かける大きな影は何だかいっそう嫌な感じだ。)もうちょっとだよ。メリーとあそぼ。そしたらあっというま!(気休めに気休めを塗り重ね、声を張り上げると途端、宙に放り出されるような感覚があった。彼女も一緒。海はない、浜辺もない。もちろん赤瓦の屋根の家もない。前も後ろも右も左も上も下も、どこまでも続く青い暗闇と大小無数の星々に囲まれている。その中をふわふわとふたり漂っている。気づけば体は元のメリーだ。)ネイ!(彼女は子どもか、それとも大人か、どっちでもよく、ただともすればふわふわと離れていってしまいそうなその両手をぎゅっと掴んで引き寄せる。)
2021/12/30 13:13 [99]
(まま行かないで。ほんとはいやなの。さみしいの。メリーが言うような、そんなわがままは告げられるはずもなくて、自分の代わりに寂しいと言ってくれる友達を抱く手に力を込めるばかり。母が行ってしまったあと、大丈夫だよと自分に言い聞かせるみたく友達に声をかけた。)はーい、岩場には行きません。ままにも怒られちゃうからね。ん〜……何いろの巻き貝がいいかなー。黄色とー、オレンジとー、…………あ!(真下の砂浜に視線を凝らしながら、巻き貝を探してそっちに行ったりこっちに行ったり。そしてふと見つけた茜色の巻き貝に、つい甲高い声を上げた。だってぜったい、この色が一番メリーに似合う。誰かに取られるわけでもないのに、慌てて拾い上げれば夕日に透かし、メリーの髪にあてがった。かわいい!ときゃあきゃあはしゃいで笑った。)そっか。明日はどようびだ。ままがお菓子つくってくれるね。(毎週土曜日は、母が昼間に甘いものを作ってくれる日だった。寂しい思いをしているだろう娘に対し、きっと母が決めたせめてもの特別な日。幼いながらになんとはなく理解していたけれど、やっぱり寂しいものは寂しい。その海風に混じる声音は、小さな子供のものにしては穏やかすぎていた。)……うん。そうだね。ねーにはめりーがいるから、大丈夫。(それでも絶えず自分を慰めてくれる友達の声があるから、ひとりぼっちなんかじゃないから、へにゃへにゃと笑顔を象れる。抑えるように抱き締めた中にあるものは、もしかしたらぬいぐるみでも友達でもなくて、本当は。──へなりと笑った次の瞬間、自分はふんわりと宙に放り出されていた。海も、港も見慣れた街並みもあれもそれも誰もいない、青い青い暗闇と無数の星々が視界に広がる。その光景は一瞬、美しいとも思えた。)めりー……?(だけど、途端に引き離されてしまった友人が手の中にいないことに、少女は何よりもの不安を抱く。揺れた瞳にぶわりと涙を溢れさせながら叫んだ。めりー、めりー、どこー。少女の泣き声は広すぎる暗闇の中ではあまりにも小さくて、滑稽とすら言えたかもしれない。それでもふと名前を呼ばれると同時、引き寄せられる感覚に伴って、そこでようやく少年の姿が見えて、──キャンピングカーの、黴くさいベッドの上で手を伸ばす。隣で眠っているだろう友達を引き寄せようとして、あるいは差し出された手を掴もうとして。)メリー、おねがい。ぎゅってして。どこにも行かないで。(布の擦れる音と小さくすすり泣く声が、やたらとこもって響く。まだ夢の中にいる気がしていた。恐ろしいほど無音の夜に、世界にはきっとただひとりの声しか届かない。それでもとささめいたに違いなかった。ずっと傍にいて。)〆
2022/1/1 02:01 [111]
メリー.
2022/1/13 18:51 [123]
(そうして振舞っていればみるみるうちに、最初から自分はお人形の女の子だったような気がしてくる。イカと一緒くたにされて怒るメリーの自我はあっというまに溶けてなくなってしまいそうだ。寂しがる友だちを励まして、喜ばせたい気持ちだけが耐えずそこにある。一所懸命選んでくれた巻貝を髪にくっつけて誇らしげ。夕陽に照らされてボタン目がキラキラ輝いた。)そうだよ、ネイ。りんごのケーキかな?パイナップルのゼリーかな?ひょっとしてひょっとしたら……ホイップクリームもついてるかも!(聞く耳が聞けば少し空々しいくらいに、彼女の気分を盛り上げようとがんばった。そのために生まれてきたとは言っても、他に誰かを慰めた経験があるわけではない。彼女だけの友だちは度々空回りもしたし上滑りもした。やがて自分で自分の機嫌を取るすべを覚えたネイが、メリーを必要としないお姉さんになるまで、失敗と成功を繰り返した。嵐に吹かれても、大波に飲まれても、暗闇に放り出されても同じだ。)ネイ! ネイー!(きみの名を呼び駆けつける。不恰好に星の海を泳いで、要るだけそばに居続ける。大丈夫、ひとりじゃないよ。大丈夫、ゆっくり息をしてみてね。泣いてもいいよ、泣きやませるよ。ふたりいっしょに、このまま、どこへだって行ける。心細がる手を握る。)──…………?(気づけばただの夜だった。彼女が手に入れた車の中、彼女がかけてくれた毛布にくるまって目を擦る。燃料の節約で暖房を止めた車内は薄ら寒く、請われるままに伸ばしたたくさんの腕たちはぐなぐなぐなぐなと彼女の全部を繭のように包み込むだろう。嘘っぱちでもお母さんのおなかの中くらいあたたかなそこで、せめて朝までよく眠れますように。)ずうっと、いっしょ。 いっしょだうぅ。(それしかできないけれど、それだけは約束しよう。彼女がメリーを要らなくなるか、メリーが彼女のじゃまになるまではきっと。翌朝また寝坊して友だちに起こされるだろう怪物は、すすり泣きが聞こえなくなるまで起きていた。)〆
2022/1/13 18:51 [123]