A:(昼想夜夢)
taxi
タクシー
2021/12/22 18:03 [7]
(がたん、と車体が思い掛けず大きく跳ねる。起床を促すであろう揺れに「あ、やば」といかにもやっちまったという声が漏れて恐る恐ると隣を見た。背凭れをいっぱいに倒し、助手席で眠る相手へ気まずそうに眉を寄せる。「……起こした?」「おはよ〜」「どんな夢見た? 涎垂らしてるよ。」運転を続けるべくその視線は直ぐに前を向くものの言葉だけはゆるりと寄り添わせよう。冗談も混じえて。ハンドルを握る人間はタクシーの運転手の装いで、帽子を目深く被った顔には横窓から差し込む陽光によってまるで不自然に影が作られる。詳しいかおかたちは不明だけれど、きっと夢の中だから疑問にも思わない筈。それは車体では無くぼんやりと本物の人間の形を保っていた。ぐっと生身の足を踏み込めば、爆走していた車体がさらにタイヤを擦り減らしドリフトもどきも披露して爆爆爆爆爆走に切り替わるだろう。)げえ〜。相変わらず景色変わらないね。そろそろ虫食べてみる?(ははは!と大口開けて笑う様は顔文字同様喜怒哀楽を確立。黄色いタクシーから外界は、まるで世界が滅亡してから100〜200年以上経ったかのように緑が生い茂っている。屍も、人間が生きた証も、無に還っていく世界で、何故か正しくふたりぽっちが生き残っていた。夢の中。)今日の夜は肉を狙うか、魚を狙うか……どっち? 自分は肉派〜。
2021/12/22 18:03 [7]
jun
2021/12/23 21:49 [26]
(ふっ、と階段から落ちる感覚にビクッと肩を揺らした。ぱちぱちと瞬きを繰り返して、ぼんやりとしていた視界が明瞭になっていく。隣の運転手からの指摘にぐい、と口元を拭えば手が手の甲に赤のリップがついた。顔に何かまとっていて、化粧をしていることを思い出す。いや、した覚えないけど。)なんか…ベランダで家庭菜園する夢…。(ぼやぼやと寝起き特有の輪郭のない声で紡ぐ。ありえない状況にすぐに夢だと気づいたのに、この空間は幻だと気づいていない。隣を向けば眩しさで目を細める。)……君に性別の概念ってあるの?(ふぁ、とあくび混じりに問いかけた。覗き込もうとしてもよく見えないし、それよりも急に上がったスピードに対し咄嗟に前を向く。眠気が一気にふき飛んだ。)はっや!! あはっ、くそスピード違反…。(爆走にシートベルトを掴む。焦る様子もなく楽しげに笑って、窓の外の景色を眺めた。コンクリートを覆うように緑が生い茂って、この車だけが自然から隔離している。)絶対やだ。虫食べるくらいならそこら辺の草で栄養摂る。(節足動物たちが頭に浮かんで顔を歪めた。確固たる意思を持って虫は食べない。「こんな状況なんだから私も進化したらいいのにね」首を戻して前を向く。消化器官とかの発達で食べられない毒もいけるようになればいいのに。)ん〜…私は魚。はい、じゃんけーん。(最初はグー、と切り出して間髪入れずにじゃんけんぽん。向こうが運転中だろうが気にせずにチョキを出した。)
2021/12/23 21:49 [26]
taxi
タクシー
2021/12/24 15:31 [36]
(いたずらに騙されて拭う様子を「純は今日もきれいだね〜」なんてにや〜っと笑った。それが家庭菜園に繋がればはははっと失礼な笑いに変わった。次いでまるで自分を人間だと認識しているかの如く一度きょとんとしてから、横目向く双眸を細めるのか。)ふふ、面白いこと言うじゃん。人間だから生物学上の性別くらいあるよ。確認してみる?(かちゃかちゃ、とわざとらしく片手でベルトのバックルを外す音を鳴らしてみるも、本当に外す気は無いから音が車内を揺らすだけ。顔文字にしてもきっとちょっぴりこばかにしちゃいそうな笑み。シートベルトもしないままぐんぐんとスピードを上げつつ「この状況での進化って、退化にもなりそう。猿に逆戻り。」衣服も調理も不要として生きていく原始人生活。くつくつと喉奥を揺らして笑っていたのも束の間、突如始まったじゃんけんに動揺は隠せないばかりのパー。)はあっ!? あ、え!? ……ずっる!純がずるした〜。(文句を言えど海に繋がる堤防近くにタクシーを停車させると、後部座席に手を伸ばし釣り道具一式を手に取る。パックに入っている集めた幼虫をこれみよがしに見せつけながら、当たり前に開くドアから外へと出よう。)いーーーーーい天気! あんたも早く降りてきてよ。ほら。(助手席の彼女の手首を掴み引っ張り出して汚れたコンクリートをたたら踏んだ後走るその瞬間、ガラッと足元が欠ける。)お わーーーー!!!!(崩れた足場からひとりぼちゃんと海の中へ真っ逆さま。青空に悲鳴が響いた。もともと車だからか当然カナヅチ、ごぼ ごぼぼぼ と大量の泡沫とともに沈むだろう。)
2021/12/24 15:31 [36]
jun
2021/12/25 20:09 [50]
……。(無言で汚れた手の甲を隣の運転手の腕に擦り付ける。ルームミラーに顔を覗かせて、自分の顔面を確認した。少し薄くなった赤いリップ、瞼に乗っているのゴールドのラメ。ちょっとオレンジベースみたいだからリップとの合わせが悪い気がする。それだけで急に気分が下がるから、どうしようもなくまだまだ人間のようだ。)えっいやいや別にそこまでっ……むかつく顔してんなぁ…。(音を聞いて反射的に止めようとしたが、冗談だと分かれば伸ばしかけた手を戻して顔を歪めた。よく見えないくせに言い切って「脳みそも猿に戻っちゃう感じ?」と唇の片端を吊り上げて笑った。妊娠して子供を産むと脳みそが変化するらしい。ヘビースモーカーがすっかり嫌煙家になってしまったのもこれが一因だろうか。しゃらくさ。)戦略です〜。(得意げに笑って、景色が緑から青に変わっていくのに対し満足げに笑みを深める。人気が少ないと勘違いするくらい海は普通だ。用意されている餌に関しては「無理無理無理」と首を横にぶんぶんと振るのだってそのひとつ。取って代わらない日常みたいだった。)はいはい。そんなに急がなくても魚は逃げないでしょ、(助手席を開けて車から降りれば、ヒールがカツりとアスファルトを鳴らす。そういえばヒールを履いてたな、そう実感した瞬間自分の手首を掴んでいた人が目の前から消えた。)はーー!?(性に合わない大声を出した。引き上げるように力を入れる。補修工事もされてないから脆くなっている可能性もあると振り返るのはもっと先の話。つられてバランスを崩せば自分も海へと真っ逆さま。多分崩れなくても後を追おうとしていた。沈みいくのを止めるように手を自分の肩へと手を回して、足をバタつかせて浮上しようとする。私の幻覚なんだから、ちょっとくらい都合よく動いてほしい。)ぷはっ……ばーか! あんた海の中なのに重いんだよ!!(元から丁寧じゃない口調がさらに雑になる。濡れて張り付く前髪をかき上げた。)
2021/12/25 20:09 [50]
taxi
タクシー
2021/12/27 17:58 [69]
あっ。おいおいこの世界じゃ汚れ落とすのも一苦労だって分かってる〜?(影が変に遮らずに露わになる薄い唇が分かりやすく不満に曲がる。そうして彼女が車内のミラーと睨めっこするから「塗り直してあげようか? ねえ、塗らせてよ。」と提案とともに、ハンドル持たぬ方の手を振ればマジックよろしく口紅が掌上にころり。承諾してくれるならちょっと停車したっていい、時間だけは無限にある。)脳みそが猿になったらどうなるんだろうね。いっそ野生動物の方が今は楽なのかな?(無駄な考えも過ぎらずに日々生きることだけに耽るのか。視線は道の先に向けたまま緩やかに疑問符ごと首を捻ってみせる。──さて踏み崩した革靴ごと海へ落っこちた顛末は、ふたりずぶ濡れ。大海原へと道連れにしてしまったであろう彼女に引き上げられるまま海面へと顔を出すと)ぷはッ……はぁ…あはっ、……はははは! げほ。純、メイクよれてるよ。折角お姫様みたいだったのに、早めに傅いておくんだった。(脱げない帽子の下で口から水を垂らしている自身が呑気に言えたことではないけれど、必死に生きる彼女の美しさが楽しかった。生きるというよりも生かすが正しいかもしれないが。笑い声の合間にげほげほと続く苦しさに咳き込みつつ、ぎゅうと彼女を抱き竦めてもどうか沈みませんように。)触れるし、体温もあるし、鼓動も動いてるし、この後は温泉に入ってご飯も食べれる。この世界に最後に残ったのがにんげんふたりで良かったね。寂しくないだろ?(時折打ち寄せる波にわぷっと溺れそうになりながらも、水面に浮かんでいるのを介助された状態にて堤防の縁を掴んだなら一足先になんとか登り切ろう。ごめんねと謝り一つ入れて海上の彼女に手を伸べれば、人間だから互いに助け合うこともできる。夢の中なんてつゆも疑わない笑みで、「ドレスも盗んで着ない?」なんて巻き込んだことを今更悪びれてもいない。)
2021/12/27 17:58 [69]
jun
2021/12/29 02:29 [86]
寝かせとけばいい感じの味になるでしょ。(つんと澄ました顔で断言して、提案には「え〜…?」と訝しげな視線を向けた。向こうの手元にある口紅は、パッケージからよく使っていた物だったことが見て取れた。できんの?って疑問を眼差しに乗せた後、体を隣に向ける。)……はみ出したりしないでね。(なんとなく気に入らなかったリップを再び唇に乗せる気になったのは気まぐれだ。こんな姿を見る他人だっていないわけだし。)かもね。猿になったら君のことは忘れちゃうだろうけど。(これで野生動物の方が賢かったら面白いが、歴史を振り返るに恐らくそうではないのだろう。きっと、助手席で眠るくらい安寧な日々を得られる。そんなノスタルジーな感覚をぶっ壊すみたいな水しぶきと冷たさ。溺れかけても普段と変わらぬ物言いに肩を竦めた。)ほんっと減らず口…。ねぇこれ取れないの?(もう影が顔みたいに思えてくる。帽子に手を伸ばして、つばの部分を持ち上げようとした。接着剤でくっつけられたみたいに脱げないのだろうか。片手を伸ばしたままの状態で抱きしめられる。肌に触れる水温以外の温度に目を丸めた。ぽたぽたと毛先から落ちる水滴はこのひとの腕を濡らすだろう。)ふたりだっけ。(子供みたいな声音で疑問、もしくは確認のようなものがまろび出る。)……ひとりとひとつでもいいよ。持ち運びに楽だしね。(体温も鼓動もなくても、それはそれで良さを導き出せる気がした。海の中にいるのと似たような浮遊感が頭の中でも起こっていたが、それは後回しにしてひとまず陸に上がることを優先する。伸ばされた手を掴んで地上に上がれば、けほっと咳をひとつ。)指輪は…あるからネックレスでも盗もうか。(どんな時でも左手の薬指にはダイヤの埋め込まれたプラチナの指輪があった。「君もおしゃれしたら?」と運転手の袖をつまむ。ハプニングくらいないと1日が長く感じるから、謝罪は必要なかった。2回目はないけど。)
2021/12/29 02:29 [86]
taxi
タクシー
2021/12/30 00:32 [95]
失敗したら明日も挑戦させて。綺麗に塗れるまで。(適当な言葉を繋げながら道のど真ん中で急に停車したって怒られない。上半身のみを助手席へと捻ったまま片手で華奢な顎を持ち上げると、もう片方の手でその唇を染めていく。まるで慣れた指先は上手に色を形作ることに成功するから満足げに口角を上げるものの、存在を忘れるとの発言に一変むっと唇を尖らせる。きゅきゅきゅ〜と自身の唇にも同色の口紅を塗れば、むちゅ!と彼女の白い頬にスタンプよろしく押し付けてやった。)少なくとも今日は忘れらんないだろ。ざんねん、純。(猿になろうがどうなろうが、彼女の頬にこの紅が咲いている限りは自身の存在を忘れたくても難しいと思いたい。そんな幼稚なじゃれあいの一幕。)帽子、取りたいの? この帽子の下を暴いてもあんたは変わらない? 男だったらもっと距離を取らなきゃとかさあ、女だったら優しくしなきゃとかさあ。(帽子のつばを掴む彼女の手を逆に覆うよう握って問い掛ける性別不詳のにんげん、もしかしたらのっぺらぼうかもねなんて冗談だってひそりと呟いて。ひとりとひとつという言葉には何も返せず、小さな吐息だけが空気を揺らす。)ふんっ、指輪も自分に贈らせてほしかったのに! 特別に許すよ。ティアラも添えればこの世界で最後の女王様じゃん。……と、その運転手。(さて運転手にこれ以上の洒落っ気は必要だろうか、袖引かれたままうーんと低く唸り首をやや傾げて思考。「お好みの格好は? 自分の女王様。あんた好みの騎士様もいいね。」と濡れた白手袋纏った片手を胸に添え尋ねた後、あと単音を口にする。コンクリートに落ちていた網を拾い上げたなら、海上をぷかぷか漂うビンのボトルを掬い上げよう。蓋を開けて折り畳まれた紙切れ一枚引っ張り出せば、表情の読めない僅かに色の残った唇がゆっくりと開かれる。)あんたの家族からだ。生きてるって。(一通のボトルメッセージ。結局は夢の中で、間も無く目覚めるだろうけれど。)
2021/12/30 00:32 [95]
jun
2021/12/31 00:27 [103]
(塗られた唇をルームミラーで確認すれば、はみ出している部分もなくて「やるじゃん」と満足げに微笑んだ。思っていたより器用なものだと感心したのも束の間、頬には唇のマークがひとつ。)……汚れを落とすのも一苦労って言ってたのは誰だっけ〜?(眉尻を上げて手の甲をぎゅっと摘んだ。全力じゃないけど痛くないことはない程度の力加減。さっきみたいに手で拭うことはしなかった。余計汚くなるからっていう言い訳みたいな言葉を、心の中でひっそり作って海に沈む。もちろん頬のスタンプもよれた。)は? 私優しいけど?(開口一番は的外れの逆ギレじみた反応。帽子からそっと手を離して覆った手から抜け出せば、額を狙ってピン、と人差し指を弾いた。感触は固かったので位置的に鼻から上は狙えたのだろう。)君に対する感情も態度も、性別じゃあ変わらないよ。どっちでも優しいまま。(鼻で笑う姿には優しさなど微塵もない。陸に上がって、重力が増した気になればぐるりと肩を回した。ポキポキと関節の鳴る音がする。)社会が成り立ってないこの世界にいる女王ってなんか締まらないなぁ…。……その手袋に合いそうな軍服でも着る?(乗り気じゃなさそうな返事をしたわりに、白い手袋を見つめる目は楽しげだ。「運転手と騎士、私が見たい方に早着替えしてね」女王を気取って無茶振りをひとつ提案し戯れていたが、声に反応してボトルの蓋が開けられるのを見やる。波がコンクリートを叩きつける音がどこか遠くへいけば、向けられた言葉がやけに響いた。) 、(言葉を失い目を丸くし、ごくりと唾を鳴らす。徐々に潤んでいく双眸だったが、涙はこぼれず口角が上がる。)うそだぁ…。(乾いた否定を呟いて、足元を見ればいつの間にかヒールは脱げている。私は。私なんか、)あえないよ。(──後ろへ下がり、仰向きのまま身を投げ出した。ぱしゃんと海が音を立てるより先に、この夢は終わるだろう。)〆
2021/12/31 00:27 [103]
taxi
タクシー
2022/1/12 00:00 [120]
誰だっけ〜? ま、落とさなくてもいいじゃん。ね。(ちょん、と自身の頬を人差し指で叩いてみるけれどその手の甲が抓られるなら痛みに悲鳴とともに体が小さく跳ねる。ちょっとオーバーなくらいのリアクションの後に容赦ないなあ〜という文句と裏腹に楽しげな笑みを浮かべよう。生々しい唇の痕跡。口紅は落ちる過程にこそドラマがあるという。結果は呆気なかったけれど、一際その静かな体温を知れた。ぴんと額を弾く音も。)優しいのはどうかな〜。たまに甘さは感じても優しさはな〜……。優しくされたい訳でもないしね。(気を遣ってもらう必要などない。運転手と騎士の欲張りセットならば「おまけに執事も付けましょう。……朝はコーヒーだろ?女王様。」と口元にわざとらしく笑みを湛える。そんな戯れのひとときも流れてきたボトルに一転。凪いでいた青い海が彼女の心境の変化に合わせて、徐々に打ち寄せる波を強くする。けれど帽子の奥の瞳は彼女から決して逸らせずに、涙にも成りきれないその潤びを追うのみ。一等美しい、その感情の変化。きっと自身では引き出せない気持ちの起伏。彼女のこころは何時までも滅んだ世界に置き去りにされているのだろうか。嘆きのような声の果てに華奢な身体が傾くから、水没しか知らない身体だというのに咄嗟に手を伸ばして、捕まえた手首ごと引き寄せ掻き抱いたまま一緒に沈んでいく。ぶくぶくとそこかしこから泡沫が浮かぶ青い世界の奥底へ仕舞われて。開いた唇から一層大きな泡が弾けた。)純に、この今生を捧ぐよ。(誰に会わずとも。水中であり夢中であるこの声は音となる。一緒に生きるのも、一緒に死ぬのも、最期まで付き合いたいんだ。例えばいつかこの身が消えてしまっても、どうなろうと、変わらず傍に居ることを知っていて。息苦しさと反対に急速に意識が浮上して、ただの車の幻として目覚める寸前に、漸くこれが夢だと気付く。)ああ……可哀想にね。身体があったばかりに、純の未来に寄り添えなかったなんて。
2022/1/12 00:00 [120]
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